Alumnaeの活躍を知るVol.5 


齋藤(加藤)直子さん 87回生

経済産業省

2019年10月30日

11月30日に行われる第2回みこころネットワーク交流会のテーマは「社会貢献を考える」です。
国家公務員として日本はもちろん、地球規模の発展を考える仕事をなさる齋藤(加藤)直子さんをお招きしてミニスピーチをして頂きます。聖心の卒業生で官僚という職に就く方はそう多くは無いように思いますが、その職を選んだ齋藤さんが思う「社会貢献」とは、また私たちができる社会貢献について、お話を伺いました

 

 

齋藤(加藤)直子 87回生

上智大学卒業 東京大学公共政策大学院修了後、2008年経済産業省入省。入省から計4年間は、通商政策局でWTOドーハ・ラウンド交渉と、TPP交渉入りを目指した政策形成・機運醸成に携わり、通商ルール作りに関する国内外のダイナミックな調整・交渉の現場を経験。
その後、フロン法の改正、2年間の米国留学(コロンビア・ロースクール、ジョージタウン・ロースクール)にてNY州弁護士の資格取得。
その後インフラ輸出推進の担当を経て、資源外交及びLNG政策の担当として、日本への合理的且つ安定的な石油・天然ガスの調達のために、資源国との関係構築や産消間の対話のために世界を回る日々を過ごし、今再びWTO関連の政策に携わっている。国家公務員試験は法律区分にて合格。


どのようなお仕事をしていらっしゃるのですか?

2008年に経済産業省に入省し、WTO(世界貿易機関)、経済連携、フロン法改正、インフラ輸出、資源外交を担当する部署を経て、今年の夏から再び日本のWTO※1に関する政策の立案・執行に携わっています。

国際的な交渉の場では常に先進国・途上国の対立が激しく、また近年は米中の貿易摩擦が激しくなる中で、いかにして「ルールに基づく貿易」という原則を維持し、時代にあったルール作りを強化していくのか、ということが目下の課題となっており、これに日本としてどう取り組むのかを検討し、様々な国際会議や交渉の場で、一つ一つ実行しています。

2013年~15年には、2年間の米国留学も経験しました。

※1 WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)

政策や国際的なルール作りとグローバルな視野に立たれた社会貢献をされていらしたとのことですが、私たちにもできる小さな意識改革のアドバイスがあればお教えください

 

エネルギーや通商、といった個々の分野で具体的にどうか、ということではないのですが、「小さな意識改革」という意味で重要なことは、世界で起こっていることと、私たちの日常・生活で起こっていることは、無関係ではなく、どこかで必ず繋がっている、という意識を持つことではないかと思います。

一人一人の生活が集まって、「日本社会」「国際社会」を形成しているわけですので、様々なことに当事者意識を持って考えたり、行動したりすることが重要ではないかと思います。

加藤さんが思う社会貢献とは?

私は国家公務員という、一見して分かりやすい「社会貢献」を目的とする職業に就いていますが、直接的に公益に奉仕する職業に限らず、職場、地域、家庭など、それぞれの場所で、それぞれの人に求められる役割があると思います。

1人の人にも複数の役割があり、特に女性は、ライフステージに応じてその比重が変わることも多いと思いますが、その時その時に自分が置かれた環境の中で、常に周りの人との関係で求められる役割が何かを見極め、それを果たして、周りに作用していくことが、社会に貢献していくということだと思います。

社会貢献についての考えの根っこについて聖心での教えがあるとしたらエピソードを教えてください

聖心で学んだ様々な教えや、途上国で活動するシスター方のお話、奉仕活動等を通じて培われた、自分が周りに生かされている、という感覚や、周りのために自分を使うことに対する喜びは、社会貢献についての考えの根っこに確実に影響していると思います。

最近読んだ本の中で、児童精神医学のSocial Referencingという概念を学んだのですが、これは、乳幼児期の子供が親や周りの人達から、常に愛情を持って見守ってもらい、自分の行為を追認してもらい、出来るようになった些細なことを一緒に喜んでもらうという経験の積み重ねを通して育んでいく、社会の中で人と共感し合い、それに誇りを持つような感情・感性のことを意味するそうです。私はこの概念に当たった時、「互いに愛し合いなさい。私があなた方を愛したように」という、学校でも何度も聞いた聖書の言葉を思い出し、後段の「私があなた方を愛したように」が重要だったことに気づきました。つまり、「他者を思いやりなさい」「人のために惜しみなく働きなさい」と言われても、自分がそうされた経験がなければ、人間そうするのは難しいのだと思います。社会貢献をしたい、と思う感性が育っていることの背景には、聖心や、家庭等での生活を通じて親切にしてもらった経験や、存在を認めてもらった経験、大いなるものに守られているという感覚が、大きく影響しているのだと思います。

加藤さんが今興味を持っていること、そして次に取り組みたいと思っていることなど、今後のご自身のライフデザインについてお話しください

公務員としてこれまで仕事をしてきた中で、日本では公共空間が狭い、公共政策を担う層が薄いと感じてきました。社会が益々多様化する中で、働き方、社会制度の在り方、豊かさの定義など、様々なものが変わっており、公務員のみで出来ることにも限界があると感じています。国家公務員は、人事の仕組み上通常2~3年で部署を異動するので、様々な分野の業務に携わることになりますが、それぞれの分野で一つ一つの課題解決に尽力しながら、一貫して、公共政策と市民社会との関係を考えていきたいと思っています。また、来年出産を控えており、今後は子育てと仕事のバランスの取り方についても、自分自身の優先課題として取り組むことになりそうです。


記事作成 永木素女(66回)